日本語の会議を文字起こしするなら、選び方はこう整理できます。会議重視なら Whisper medium / large-v3(パラメータの多い汎用モデル。同時発話や雑音のある自然な会議で安定しやすい)、軽さ・日本語特化なら Kotoba Whisper v2.0(日本語に特化して軽量・高速。読み上げ音声では高精度)。どちらも OffReco(オフレコ)なら完全ローカルで選べて、すぐ切り替えて試せます。この記事では、両者の違いと「精度・速度」の見方を、出典つきで整理します。
そもそも何が違うのか
ざっくり言うと、汎用の多言語モデルと日本語特化の軽量モデルの違いです。
- Whisper large-v3: OpenAI の Whisper シリーズの最上位。多言語を1つのモデルでまかなう汎用モデルで、精度は高い一方、パラメータ数が大きく処理は重めです。
- Kotoba Whisper v2.0: その large-v3 を**教師にして蒸留(distillation)**した日本語特化モデルです。HuggingFace のモデルカードによると、エンコーダは large-v3 をそのまま使い、デコーダを2層に軽量化したうえで日本語データで学習し直した、とされています(出典: HuggingFace モデルカード)。
つまり Kotoba v2.0 は「large-v3 の日本語力を引き継ぎつつ、軽く速くした」立ち位置です。
精度・速度・メモリの比較
数値はすべて HuggingFace のモデルカードに基づくものだけを挙げます。
| 観点 | Kotoba Whisper v2.0 | Whisper large-v3 |
|---|---|---|
| 種類 | 日本語特化(large-v3 から蒸留) | 多言語の汎用モデル |
| 読み上げ音声の日本語 CER | large-v3 と同等以上とされる(CommonVoice 8 日本語で CER 9.2) | 多言語で高精度な汎用モデル |
| 速度 | large-v3 と比べ約 6.3倍高速とされる | 大きめで処理は重め |
| 推論ライブラリ | faster-whisper(CPU 推論)向けの重みを提供。mlx 版は無い | mlx 版あり(Apple Silicon は GPU で高速) |
ポイントは、モデルカードによると Kotoba v2.0 は読み上げ音声の日本語ベンチで large-v3 と同等以上の誤り率(CER)でありながら、約 6.3倍高速とされている点です(CommonVoice 8 日本語で CER 9.2)。さらに高速推論ライブラリ faster-whisper 向けの重みも提供されています。
ただしこの CER 9.2 や約 6.3倍速は、CommonVoice 8 という”読み上げ音声”のベンチでの値だという点には注意が必要です。読み上げの単一話者・低雑音の条件で測られた数字であり、同時発話や雑音のある自然な会議では、パラメータの多い汎用モデル(medium / large-v3)のほうが安定することもあります。ベンチの順位がそのまま会議での順位になるとは限りません。
もうひとつ実務上の差として、Kotoba は faster-whisper(CPU)で動く重みのみで、mlx 版がありません。そのため Apple Silicon でも GPU は使わず CPU で動きます。一方 medium / large-v3 は mlx 版があり、Apple Silicon なら GPU で高速に回せます。
なお、ここに挙げた以外の数値はあえて足していません。実際の精度・速度は録音環境や端末によって変わるため、最終的には自分の会議で確かめるのが確実です。
どちらを選ぶ?
選び方は用途と端末で分かれます。
- 会議の精度を重視する(同時発話・雑音がある): パラメータの多い汎用モデル Whisper medium / large-v3 が安定しやすい。Apple Silicon なら mlx 版で GPU 高速なので、会議でも現実的な速度で使えます。
- Apple Silicon で速く回したい: 上と同じく mlx の medium / large-v3 が扱いやすい。GPU を使えるぶん、重めのモデルでも待ち時間を抑えられます。
- Intel Mac/とにかく軽くしたい/日本語特化で試したい: Kotoba Whisper v2.0 が向きます。faster-whisper(CPU)向けの重みがあり、読み上げ音声では高精度・軽量です。
迷ったら、会議重視なら mlx の medium / large-v3 から、軽さ・日本語特化を試したいなら Kotoba v2.0 から始めて、もう一方にすぐ切り替えて比べるのが扱いやすいです。
OffRecoでの使い分け
OffReco は、この両モデルを完全ローカルで選んで使えるのが特徴です。
- どちらもローカルで動く: medium / large-v3 は Apple Silicon の GPU(mlx)で高速に、Kotoba v2.0 は CPU(faster-whisper)で動きます。セットアップ画面でモデルを切り替えられます(モデルの選び方)。
- 音声・本文を外部に送らない: 録音から文字起こし・話者分離まで端末内で完結し、音声・文字起こし本文を外部に送りません。機内モードでも文字起こしが動きます(初回のモデル取得時だけ通信が必要です)。
- 全自動 × 低い入口: 会議を自動検知して終了で自動文字起こし。初月無料、その後は月¥220 / 年¥2,200、macOS 14.2以降で動作します。
会議重視なら mlx の medium / large-v3、軽さ・日本語特化なら Kotoba v2.0。どちらもクラウドに上げずに使え、すぐ切り替えて比べられます。まずはダウンロードして自分の会議で確かめてみてください。関連して、日本語に強い文字起こしアプリの選び方(Kotoba Whisperとは)や、Whisperをローカルで動かす(設定不要の選択肢)も参考になります。